今日は、信託を利用した相続対策を考えてみます。
我々不動産に携わる者は、ファンド系により信託された不動産と遭遇する機会も増えましたので、信託は身近なものになって参りました。
信託された不動産登記簿を見ますと、
① 前所有者 = A不動産株式会社(売買により所有権を得た)
② 現所有者 = X信託銀行(信託により所有権移転した)
③ 受益権者 = B株式会社
こんな記録を確認することがあります。
これは、①の段階で所有権を持っていたA不動産会社が、X信託銀行に不動産を信託(②)し、その利益を得る者をB株式会社(③)としたものです。
X信託銀行は、不動産を所有こそしていますが、自分で使うことはなく、その利用権というか利益をB株式会社に享受させ、併せてB株式会社から、この不動産を管理する為の費用や管理報酬を貰う・・・、こんな図式です。
『所有・管理』 と 『利用』 と 『利益』 を明確に分けることができます。
これを、例えば個人の相続財産に使うという発想。
すごいなぁ、みんな色々と考えるんですねぇ。
① 前所有者 = Aさん(お父さん)
② 現所有者 = Xさん(お父さんが信頼する人、又は法人)
③ 受益権者 = Bさん(お父さんの長男)
この不動産を利用したり、この不動産からの収益をBさんが享受し、それをXさんが管理する・・・、こんな仕組みです。
えっ? これでなんで相続対策になるの?
単純にお父さんが長男へ財産を相続してあげればイイのでは?
そう考えたりしますよね。
このお父さんは、こんな事考えたんだと思います。
『大事な財産じゃ、いつか長男に相続が起こった時、長男の嫁さんに財産がいくのは・・・、どうもなぁ・・・。』
信託するときの決めごとの中に、こんなことが設定できます。
『長男が死んだ場合、その受益権を孫へ与える・・・』
こんな設定をした場合、この資産を管理するXさんは、Bさんの死亡を確認し、その資産の受益権をBさんの子供へ移管する権限を持っています。
そうです、信託形式ではなく、完全なる所有権を長男に与えた場合は、長男の相続人に資産が相続されます。
これを信託形式にしておくと、所有権は管理者のままで、受益権を予めAさんが指定した相手に移管できるのです。
う~ん、人生色々と先の先まで考えて、手を打っておきたい人がいらっしゃるのですね~。
そして、この方法、Aさんがボケてきてしまった時でも、管理者がしっかりしていれば、Aさんが当初考えた通りに、Xさんが事を運んでくれる・・・、そんな利点もありますねぇ。
しかし、そのまた先をどう決めておくのか・・・。
いつか信託を解除したくなった時、それは誰がするのか・・。
いくつか実例を見てみたいものです。
・・・ということで、こんな本を注文しました。
『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ』
※最後が当プログ名と似ているし・・・