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相続税改正案から伺える、国の誘導方向

この度の相続税法の改正案が成立するかどうかは別にしまして、不成立であったとしても、その方向性は変わらないものと思います。

今回は、国の基本的な考え方を読んでみたいと思います。

 

まず、過去25年の相続税の税収額を振り返りますと、1986年度は1兆5000億弱でしたが、バブル時の1993年に約3兆円となり、その後、基礎控除の引き上げ、小規模宅地等の特例により右肩下がりとなり、2010年度は約1兆3000億まで下がってきました。

 

そして、死亡者総数に対する、相続税納税対象者は、ここ10年、4%程度なので、100人に4人が課税対象者でした。

 

①基礎控除の40%ダウンについて

これにより、死亡者総数の4%程度であった課税対象者が、6%程度まで拡大されるという予想がされています。

 

最近は、色々な角度から『公平』という言葉が使われますが、ごく一部の資産家から相続税を徴収するのではなく、もう少しすそ野を広げて徴収しよう・・・、そんな意図が伺えます。

 

本ブログでもUP済みですが、ギリギリ課税対象にならなかった方々は、数百万程度の納税が発生するという試算の通り、ちょっとした資産家からも徴収し、税の公平なる負担を目指そうという意図があるように思えます。

 

また、相続資産は、そもそも不労所得に近いものであるという、そんな認識が一層強くなってきているとも読み取れます。

これは、現在の経済不活性な状況において、一生懸命働きたくても、なかなか仕事が無いとか、給料が上がらないとか、そんな時代背景のもと、上位6%程度に位置する資産家からは、増税しても大きな反発は無いであろう・・・、そんなレベルを目指しているような気が致します。

 

もちろん、背景には中長期的な税収不足に対し、不景気でもその設定基準によっては、そこそこ税収が見込める相続税に矛先が向けられているのは間違いないでしょう。

 

②死亡保険金の非課税枠の縮小について

現在、死亡保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の数となっていますが、改正案では、対象となる法定相続人を『未成年』、『障害者』、『被相続人と生計を一にしていた者』としています。

 

子供がすべて独立しているような場合、配偶者だけが対象となり、500万円だけが控除されるに過ぎなくなります。

 

これは、独立していて自分で生活できている方々は、相続税においては、厳しく徴収します・・・という意味です。

 

また、生命保険は、相続税対策の一つの手段として加入されているケースも少なくないので、相続税を少なくする目的、節税の目的での生命保険利用に制動をかける意味もあるはずです。

 

③贈与税の緩和

強化されそうな相続税に対して、贈与税は少し緩和されます。

おおっ!と思いますのは、これまで相続時精算課税制度は、受贈者が子供だけだったのが、孫(20歳以上)が追加され、贈与者も65歳以上から60歳以上へと引き下げる案です。

 

要するに、高齢者から若者に、どんどん資産を移してあげることを推奨しているようなものです。

 

これは、『相続税は増税します、それならば、生きているうちに贈与税を払ってでも、若い方々へ資産を与えるほうが、感謝もされるし、宜しいんじゃないですか?』 というような、国からの声が聞こえてくるような気が致します。

 

【まとめ】

相続税・贈与税の今後を決めるキーワード

①不景気 高齢者増加  ⇒  『税収不足』

②不景気 ⇒  『若者に仕事、お金が無い、将来設計描けない』

③資産の偏り ⇒ 『資産が高齢者に集中している』

 

国は、色々な角度から、国と言う立場として見た場合の、その時その時の『国民の公平』を考えているように感じます。

これは、立場が違えば公平にも感じますし、不公平にも感じます。

 

所得税の累進課税にしても、数千万円の所得がある方からすれば、自分も一般市民として同じ道路を歩き、同じ空気を吸って、同じ水道を利用し、同じ公共施設を使うに過ぎない身であるのに、何故に自分はこんなに高い税金を払うのか?と思っている人もいるでしょうし、どうしてこんなにカツカツな生活している我々から、また消費税UPで増税しようとしているんだ!と思う方もいるでしょう。

 

今回の相続税の改正案を見ますと、『国民の公平』という観点から見た場合、『世代間の公平』が注視されているように思います。

 

高度成長期に右肩上がりに資産が増えて来た世代。

何年経っても給料が上がるかどうかわからない世代。

大学卒業者の内定率が7割を切った、そんな若者世代。

そして、そんな高度成長期の世代に支払う年金を、既に苦しい若者たちが背負っていかなければならない様相。

 

こんな世代間を少し公平にしていこうか・・・、そんな狙いが国の本当の狙いの様な気がしてなりません。